2015年12月30日

も多かれ少なかれ



ささいな秘密から、
どんなことがあっても絶対に守り抜かなければならない秘密まで、
さまざまな秘密が転がっている。

推理小説は、この「秘密」なしには始まらない。
そこに出てくる「秘密」は、日常的なものではなく、
強烈な事件性を帯びていて、
「必死に秘密を守ろうとする者」と「秘密を探る者」との壮絶なバトルが展開される。
ウソ、教唆、威嚇、脅し、そして殺人などが、
パンドラの匣(はこ)を開けたかの如く、次々と押し寄せてくる。

推理小説ではないが、
谷崎潤一郎の小説に『秘密』というのがある。
この小説を簡単に紹介すると、
主人公の「私」が、誰にも知られることなく、
女装で街を歩くことに快感を感じていく。
そんなある日、劇場の貴賓席で以前に知り合った美貌の女性と偶然に出合う。
素性に関しては何も知らなかった。
それを機に彼女の家で逢瀬を繰り返すことになるのだが、
家に着くまで、女性は「私」に目隠しをしたりと、
素性を知られないような行動をとった。

あるとき、目隠しの間から見た光景から、女性が誰かがわかった時、
主人公にとって彼女は魅力的でもなんでもなくなってしまう。
そして、主人公の最後の言葉として、
「私の心はだんだん「秘密」などという手ぬるい淡い快感に満足しなくなって
もっと色彩の濃い、血だらけな歓楽を求めるように傾いて行った。」
と結んでいる。
谷崎の、この言葉は、なかなか見事。
「秘密」というベールを剥(は)がすと、そこにあるのは血みどろの現実。

そこから、踏み出す一歩は妖しい世界への扉を開くことになる。
世にある「秘密」も、暴(あば)かれてからが恐ろしい。



Posted by xiamenjian at 15:22│Comments(0)
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